研究概要 |
(平成13年度) 蓚酸カルシウム結晶と腎上皮細胞の相互作用の検討に適したラット蓚酸カルシウム結石誘発モデルの確立に関する研究において、従来のin vivo実験条件を調整することにより、腎障害を最小限に抑制し、かつ蓚酸カルシウムの結晶尿のみを惹起させる条件の設定は可能と考えられた。具体的には、0.1-0.2% Ethylene Glycol(EG)+1.0%塩化アンモニウム(NH_4Cl)投与,day9まで、あるいは0.4% EG投与,day14以降、が適当と思われた。これらにより、これまでin vitro実験で得られている細胞結晶間相互作用に関する研究のin vivoでの追試が可能となった。 (平成14年度) (1)蓚酸カルシウム結晶に曝露された腎集合管細胞膜の検討:蓚酸カルシウム結晶が出現する条件下での、腎集合管細胞膜上のリン脂質(phosphatidylserine : PS)の分布変化を観察したところ、尿中蓚酸排泄量や蓚酸カルシウム結晶の増加に伴い、細胞膜表面にPSが発現している細胞が徐々に増加することが確認された。またapoptosis細胞内情報伝達系も同様に活性化が認められた。 (2)コンドロイチンポリ硫酸(CPS)の腎上皮細胞と蓚酸カルシウム結晶の接着抑制効果の検討:(1)と同様な実験条件下で、ラットにCPSを投与したところ、腎集合管細胞の細胞膜外方のPSの露出およびapoptosis pathwayが、非投与群に比し、抑制される傾向を示した。 これらの結果から、in vivo実験においても、微小細胞傷害によるcrystal-cell interactionへの影響が、定量的に分析できることが明らかとなった。蓚酸カルシウム結晶により生じる腎集合管細胞の微小傷害は、CPSによりコントロールされ、最終的には結石形成が抑制される可能性がある。
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