[目的]腎癌は血行性転移を来しやすい癌であるが、その転移に関連する分子機構は明らかではない。そこでcDNAマクロアレイ法を用い腎癌細胞株おいて転移関連の遺伝子発現の増減を解析した。 [対象と方法]対象はSKRC腎癌細胞株10株とSN12C株及びその高転移バリアント株SN12C/MM3株で、対照は正常近位尿細管上皮株を使用した。アレイは既知癌関連遺伝子を含む4000クローンをStanford方式スポッター(日本レーザー電子)を用い、ナイロンフィルター上にスポットし作製した。発現解析はサンプルのtotal RNAを逆転写反応下に^<33>Pによりラベルし、フィルター上にハイブリダイゼーション、シグナルを画像解析した。既知の癌関連遺伝子を中心に、SKRC株は対照と、SN12C株は親株と比較し、発現が3倍以上あるいは1/3以下に変化している遺伝子について検討した。 [結果]SKRC株では正常尿細管上皮に対し、3株以上で共通して増加あるいは低下している遺伝子が10種類ずつ認められた。また高転移株は親株に比較し、発現増加しているものが19遺伝子、低下が2遺伝子認められた。既知の分子としてはE-cadherin、cadherin-6の発現の低下、VEGF、HGF、N-cadherinの増加が見られた。MMP1と7には変化なく2の軽度増加、新たにMMP13の高度増加が認められた。 [考察と結論]マクロアレイ発現分析により腎癌細胞株において正常に比較して、多数の遺伝子発現の差が共通に認められた。腎癌高転移株で発現の増減していた遺伝子は、他臓器の癌転移に関連するものと異なる傾向がみられ、腎癌の特異性が示唆された。。さらに未知の分子について検討が必要と考えられた。
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