研究概要 |
臨床解剖学的研究において,解剖実習体を用いて詳細な解剖をおこない,骨盤神経叢およびその枝の走行および分布の解析を行った。とくにRhabdosphincterの支配神経の解析をおこなった。本筋が,骨盤神経叢のもっとも低い枝によって支配され,さらにその枝が肛門挙筋に沿って走行していることを明らかにした。これらの解析結果を整理することによって,骨盤内手術後の尿失禁を防ぐための解剖学的知見とすることができると考え,現在投稿準備中である。また,Denonvilliers筋膜の広がりの解析もおこない,発生学的研究との比較のための基礎的データの採取をおこなった。 発生学的研究において,マウス10.5〜17.5日胚の骨盤矢状断面の解析を行い,膀胱直腸隙の発生を時系列に観察した。その中で,apoptosisの存在が認められたときには,さらにパラフィン切片をTUNEL法(IN SITU Programmed cell death detection Kit, Roche)により染色をおこない,切片中にみられるapoptosisを確認した。膀胱直腸隙は,初期にみられる尿生殖洞と後腸との間に陥入する腹膜腔の前にapoptosisがおき,それによってできる頭尾方向の空隙が拡大して形成されることがわかった。この過程で腹膜は膀胱直腸隙の中に陥入することはなかった。Denonviliers筋膜の下端がどこまでなのかということについては多くの議論が今までにあったが,少なくともその発生から考えて会陰小体にまで達するとは考えられないことが示唆された。これらについては,臨床解剖学的所見とともに欧州臨床解剖学会にて発表し,投稿準備中である。さらに肛門の発生機構についてのいくつかの知見も得られ,この点についても現在研究継続中である。
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