研究概要 |
本年度における臨床解剖学的研究においては、骨盤内臓に分布する動脈配置についてまとめた。解剖体5体9側(男3体、女2体)を用いて、内腸骨動脈の分枝パターンを中心に整理し、総説として報告した(IVR会誌18:249-253,2003)。その中で前立腺および膣への動脈が、骨盤内筋膜の影響を受けずに骨盤隔壁に沿って走り、それによって骨盤内動脈のネットワークを作り上げていることについてまとめた。 発生学的研究ににおいては、マウス胚(E 11.5-13.5)を6時間ごとのステージで採取し、その矢状連続切片を作製することにより観察をおこなった。これにより、骨盤内筋膜の形成において最も重要な区分といえる、尿生殖部と肛門部との境界の形成過程の観察を行い、その過程で起こる骨盤内のアポトーシスの分布を三次元立体構築などを行い観察した。その結果、中隔と総排泄腔との癒合は見られないこと、総排泄腔の腹側部と背側部は発生経過中に交通があること、総排泄腔膜は1ヶ所にて開口するととなどをあきらかにした。この開口をもたらす総排泄腔膜の崩壊の起こる部位は、単に、総排泄腔膜の最背側部であるというだけでなく、この部位が外生殖器の腹側方への発生・成長にともなって起こる総排泄腔膜背側部の腹側移動と関係が強いことが示唆された。また、発生前半においては、総排泄腔膜背側部周囲に、また後半においては尿生殖中隔にアポトーシスの分布が見られることを明らかにした。前半において、総排泄腔膜背側部は尿生殖結節(外生殖器)の発生に伴って腹側への移動を行い、後腸・尾腸の変形が強く見られていた。よって、総排泄腔の腹側移動・変形に間葉組織のアポトーシスが密接に関与していることが示唆された。以上は学会にて報告し、論文投稿中である。これらの骨盤内の発生と骨盤神経叢の分布との関係について、データを整理しているところである。
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