研究概要 |
1.脳梗塞後の過活動膀胱に対するβ_2-,β_3-アドレナリン受容体(AR)作動薬の効果.雌ラットを用いて,ハロセン麻酔下に中大脳動脈を閉塞し,実験的脳梗塞を作成した.麻酔からの回復を待って覚醒下で過活動膀胱が出現することを確認した.CL316243(β_3-AR作動薬;10-100μg/kg i.v.)は,この過活動膀胱を抑制し,残尿を増加させることなく,膀胱容量を増大させた.他方,procaterol(β_2-AR作動薬;10μg/kg i.v.)は,同様に,この過活動膀胱を抑制し,膀胱容量を増大させたが,残尿も増加させた.procaterol(1-100μg/kg,i.v.)は用量依存的に血圧を低下させ,心拍数を増大させたが,CL316243(0.1-100μg/kg,i.v.)は血圧,心拍数のいずれに対しても有意な影響を及ぼさなかった. 2.Prostaglandin E_2 (PGE_2)誘発過活動膀胱に対するβ_2-,β_3-AR作動薬の効果.無麻酔下の雌ラットにおいてPGE_2の膀胱内注入によって誘発される過活動膀胱に対して,CL316243(0.1-100μg/kg i.v.)は用量依存的に抑制効果を示したが,procaterol(0.1-100μg/kg i.v.)は抑制効果を示さなかった. 3.レジニフェラトキシン膀胱内注入療法の臨床的検討.他の薬物療法に反応しない難治性の過活動膀胱4名および間質性膀胱炎患者3名を対象に,レジニフェラトキシン(1μM,100ml)を30分間膀胱内に注入する治療を行ったところ,過活動膀胱4名中3名,間質性膀胱炎患者3名中2名に,症状の改善が得られた. 4.結語.以上の結果より,β_3-AR作動薬およびレジニフェラトキシンは新しいタイプの膀胱蓄尿障害治療薬として期待しうることが示唆された.
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