マウスを用いて膀胱内圧測定を行い、加齢に伴う下部尿路機能の変化を検討している。Control群として8週齢の正常マウス、加齢群として2歳の正常マウスと1歳の加齢促進マウス(Senescence-accerelated mouse : SAM)を用いた。ウレタン麻酔下で開腹し、膀胱頂部よりカテーテルを刺入、生理食塩水注入路と膀胱内圧測定路とした。膀胱内に生理食塩水を注入して排尿反射を誘発し、一回の排尿反射の度に膀胱内を空にするsingle cystometryを行った。蓄尿期の評価として膀胱容量と膀胱コンプライアンスを、排尿期の評価として膀胱収縮圧を比較した。また、排尿反射を起こす排尿反射閾値圧についても比較検討した。 加齢群では2歳の正常マウスも1歳のSAMもほぼ同様の膀胱内圧曲線を示した。蓄尿期は膀胱容量がcontrol群で平均0.156ml、SAM群で0.225mlと有意にSAM群で増大、膀胱complianceはcontrol群で0.018ml/cmH2O、SAM群で0.007ml/cmH2OとSAM群で低下していた。また、膀胱収縮圧はcontrol群で29.4cmH2O、SAM群で7.87cmH2OとSAM群で低下していた。また、排尿反射閾値圧はcontrol群で6.5cmH2O、SAM群で36.3cmH2OとSAM群で上昇していた。以上の結果より加齢に伴って求進路の障害、交感神経系の障害が生じている可能性が考えられた。 今回認めた両群の違いがSAMと正常マウスの種差によるものでないことを確認するために、まだ加齢を起こしていない8週齢のSAMに対しても同様の実験を行った。その結果8週齢の正常マウスの膀胱内圧曲線と差はなかった。したがって、control群とSAM群の膀胱機能の違いは加齢によるものと考えられた。
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