移植腎の長期生着を可能にする免疫状態を解明する目的で、ヒト長期移植腎生着例の末梢血リンパ球、特にヘルパーT細胞でcostimulatory pathwayの主要因子であるCD28の発現が抑制されている現象を明らかにしたが、今年度は、1973年から1997年までに腎移植を受け現在も移植腎の生着をみている41例を対象としてCD28陰性ヘルパーT細胞の割合と慢性拒絶反応の発症との関係を検索し、また、その機能及び機序について免疫学的及び分子生物学的解析を行った。 生体腎移植例41例の末梢血中のCD28-CD4+T細胞の割合は、移植腎生着期間が長くなるにしたがい、有意に高値を示した(p<0.001p<0.01)。また、慢性拒絶反応発生例で低値を示す傾向がみられた。Cell sortingで分離したCD28-CD4+T細胞では、third party及びdonorとのMLRでdonorに対する反応が特異的に抑制されており、更にそのようなリンパ球のT細胞レセプターのβ鎖V領域の遺伝子の解析ではその分布に偏りがみられ、ドナー抗原により影響を受けている可能性が示唆された。以上の結果より、長期移植腎生着患者ではヘルパーT細胞のCD28の発現が抑制され、ドナー抗原特異的に反応性が低下していることが示唆された。この特異的な細胞はドナーに対する免疫寛容状態に関連している可能性が示唆された。
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