研究概要 |
薬剤感受性遺伝子のひとつであるUracil phosphoribosyltransferase(UPRT)遺伝子を用いてin vivo, in vitroにおける効果を解析した。UPRT遺伝子の導入により、抗癌剤である5-fluorouracil(5-FU)からfluorouracil mono phosphate(FUMP)への代謝が亢進し、DNA、RNA障害による抗腫瘍効果がより強く発揮されることで5-FUの抗腫瘍効果が増強されることを利用した治療法である。本年度は昨年よりの研究を継続し前立腺癌のみならず膀胱癌も対象として検討した。特に、その治療効果発現の根拠となる組織内での各代謝産物の活性を定量化した。 1)UPRT遺伝子による薬剤感受性遺伝子治療の有効性の検討(In vitro)各種前立腺癌(PC-3,RM-9)、膀胱癌(T-24,KK-47,MRT-2)培養細胞を用いて、UPRT遺伝子発現アデノウイルスベクターを感染させ、5-FUに対する感受性を解析し、この薬剤感受性遺伝子治療の有効性すなわち5-FUに対する感受性増強効果を検討した。その結果明らかな感受性の増強が認められたのは前立腺癌ではRM-9、膀胱癌ではT-24,KK-47でありPC-3、MRT-2においては認められなかった。以後前立腺癌としてはRM-9、膀胱癌としてはT-24を解析に供することとした。 2)UPRT遺伝子による薬剤感受性遺伝子治療の有効性の検討(In vivo) UPRT遺伝子アデノウイルスベクターを用いた薬剤感受性遺伝子治療の抗腫瘍効果をIn vivoにおいて検討するため、前立腺癌としてはRM-9/C57マウス同所移植モデル、膀胱癌としてはT-24/ヌードマウス皮下移植モデルを用いた実験を行った。膀胱癌モデルにおいてはUPRT遺伝子アデノウイルスベクター投与群において明らかに5-Fuの治療効果が増強された。さらに腫瘍内における5-FU代謝活性物の組織内活性を定量したが、治療群において明らかな活性の上昇が認められた。 3)免疫遺伝子治療との併用効果に関する検討。 Intereleukin-12遺伝子治療とUPRT遺伝子による薬剤感受性遺伝子治療との併用効果についてin vivoでの検討をおこなった。特に治療における至適投与量、および投与タイミングの検討をおこなった。
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