研究概要 |
われわれが開発した三次元再構築細胞培養法を用いて、膀胱癌において新生血管が癌浸潤に及ぼす影響を組織学的におよび経時的に証明しようと試みた。 まず、ブタ膀胱から線推芽細胞と移行上皮細胞を分離し、コラーゲンゲル内に線維芽細胞を包理後その上で移行上皮細胞を単層培養した。この結果、移行上皮は重層化し、基底層、中間層、被蓋層と層分化も良好であった。 この再構築した粘膜固有層上で、ヒト膀胱癌株(HT-1197.HT-4,T24)細胞を単層培養したHT-1197細胞は再構築した粘膜固有層に浸潤増殖していたRT-4,T24細胞は粘膜固有層上に増殖していた。次に血管内皮細胞を線維芽細胞と共にコラーゲンゲル内に包理して再構築培養したところ、線維芽細胞だけの培養結果と同様であった。EGFを添加してみたが増殖は見られず、in vitro上で血管新生を再現することは出来なかった。 そこで、三次元培養で作製した膀胱癌上皮シートをラットに移植してin vivoにおける血管新生を組織学的に検討した。しかし移植後数日でマウスが死亡し、剖検しても癌細胞の生着は認められなかった。 再度in vitroにて再構築した粘膜固有層上でヒト膜脱癌株細胞の培養を行い、VEGF蛋白の発現を検討したが、VEGF蛋白の発現を証明できなかった。また、各膀胱癌細胞VEGF分泌量を測定したが、コントロール群と比較して有意差はみられなかった。各癌細胞蛋白中のHif-1α、thymidine phosphorylaseの発現をwestern blotting法で同定したが、発現はみられなかった。 今回の実験系では膀胱癌の癌浸潤における血管新生を証明することは出来なかったため、新たな実験系の開発が必要と思われた。
|