研究概要 |
ラットの排尿のFrequency/Volume Chart記録を確立し,夜間(活動時)は頻回排尿,昼間(睡眠時)は排尿間隔延長という明らかなサーカディアンリズムを確認できた. 睡眠薬をもちいた時間生物学的検討により,睡眠薬が睡眠時のみ最大膀胱容量を増大させることから,膀胱容量は睡眠深度に関連していることが推測された.臨床においてもゾルピデムが,夜間頻尿に対し有効であることが報告されている*.このことは,ラットで認めた睡眠深度増加による膀胱容量増大効果が,ヒトにおいてもあてはまる可能性を示唆する. 抗ムスカリン薬のプロピベリンのラット排尿に対する薬効は,雌では膀胱抑制に働くものの,雄では不変で性差を認めた.Okaらによれば,脳障害モデルの頻尿ラット(雄)では,プロピベリンが有意に膀胱活動を抑制することを我々と同様の実験系で示している.雄ラットでは,プロピベリンは過活動性の病的膀胱にのみ薬効を示し,正常膀胱には効果を有しないと推測された. ラットにおいては,侵襲のない排尿記録を用いて,高い確率で膀胱出口部閉塞の診断が可能であることがわかった.BOOを有するラットは,利尿時に1回排尿量の増大よりは排尿回数を増すことで対応するため,特徴的排尿記録を示すと思われる.ヒトにおける排尿は恣意的排尿等があるため,単純に臨床応用が可能かどうかは今後の課題であるが,排尿記録という非侵襲的検査により,膀胱出口部閉塞診断の可能性が発見されたことは意義深いものと思われる.
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