1)精原幹細胞の自己増殖能の検討 哺乳動物の雄が一生涯に産生する精子数は膨大であり、それ故、精原幹細胞の自己複製能力は無限であると一般に考えられている。しかし、精原幹細胞の実体は不明な点が多く、その増殖能に関する研究もこれまであまり成されていなかった。GFPマウスをドナーマウスとして利用することにより我々は精原幹細胞の自己増殖能を継代実験を通じて検討した。これまでの実験結果から精原細胞移植後のコロニーは移植後の飼育期間とともにその長さを一定の速度で増して行くこと、そしてそれに応じてその中の精原幹細胞(コロニー形成能)も増加することが示された。精原幹細胞は移植後100日間で50倍以上に増えることが推察された。現在までのところ4代に渡る精原幹細胞の継代移植に成功しており、継代代数を重ねても増殖速度が減衰する兆候は認められない。 2)LH-RH analogueによる精原細胞の増殖促進効果 下垂体ホルモンやアンドロゲンが精子形成に重要な役割を果たしていることはよく知られているが、それらが精原細胞の細胞回転にどう影響するかは十分には解明されていない。我々は移植後早期のドナー精原細胞の増殖状態を共焦点レーザー顕微鏡を用いて検討した。LH-RH analogue投与群では精原細胞密度が高く、増殖が促進、もしくはアポトーシスが抑制されていることが推測された。さらに精子形成に重要なSCR c-kit系の関与を調べる目的で、膜結合型SCFが欠損しているSl/Sl^d突然変異マウスをレシピエントに用いた移植実験を行った。その結果、LH-RH analogueによる精原細胞の増殖促進効果はSCFを介していないことが明らかとなった。
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