研究概要 |
目的:マクロファージが活性化されエフェクター細胞として移植臓器に浸潤し障害をきたす過程をあきらかにすることを目的とした。研究計画にそった研究の実施とその成果:平成13年度の研究成果:ヒト腎移植慢性拒絶反応症例の移植腎浸潤マクロファージ上に発現されるβ2インテグリン接着分子、ケモカイン受容体、GPI関連受容体の同定したところ、慢性移植腎障害の症例にCD11b陽性細胞がすべて認められ、CD5陽性細胞より有意な所見を示した。このCD11b陽性細胞は、マクロファージ、あるいはCD5+B細胞、NK細胞の可能性があり、CD11b陽性細胞の産生制御が慢性移植腎機能障害の予防に繋がる可能性が示唆された。 平成14年度の研究成果:ラット腎障害モデルとして、石橋の確立した一側完全尿管閉塞-解除モデルを作成した。SDラット雄、8週齢の左尿管を腎下極の高さにて結紮し2週間後に25Gのシリコンチュープをカフとし尿管尿管吻合し同時に右腎を摘出し1週間の観察後に犠死により右閉塞解除腎を摘出した。腎形態学的検討と同時にED1,β2インテグリン,CD11a, CD11bおよびCD5に対する市販モノクローナル抗体を用いて免疫病理学的な手法により細胞を同定した。ケモカインレセプターの発現する細胞は、ここの細胞を同定するIn situ Hybridization (ISH)のprobe作成が間に合わず、腎組織全体からRNAを抽出しRT-PCR法により各種ケモカインレセプターのmRNAの発現を検討した。対照としては、未処置群とした。ケモカインレセプターとしては、大阪大学医学部生体制御部門の榊田悟先生のご協力により、CCR2,CCR3,CCR4,CCR5,CCR7,CXCR1,CXCR2,CXCR3,CXCR4,CXCR5,CX3Cr1を検討した。結果:対照とした未処置群に比較して、閉塞解除腎は、形態学的に尿細管内腔の拡張と尿細管の萎縮および間質への細胞浸潤は著しく線維化を呈した。ED1およびβ2インテグリンCD11b陽性細胞は著明に糸球体および尿細管間質に増加していた。ケモカインレセプターのうち、CCR2,CCR5,CXR2,CXCR4,CX3Cr1のmRNAの発現は10倍から50倍に増加していた。CD5陽性細胞は少なかった。 考察と結語:尿管閉塞・解除による腎障害モデルにおいて、ED1陽性マクロファージが増加しており、β2インテグリンCD11bの発現およびケモカインレセプターCCR2,CCR5,CXR2,CXCR4,CX3Cr1のmRNAが発現していることから、マクロファージのうち上記の分子は腎障害になんらかの関わりがあることが示唆された。今後ISH法により、発現細胞の局在を明らかにっすることで、機能的な解析が可能になると考えられた。 総括:ヒト移植腎における慢性腎障害の検討とラット慢性腎障害モデルにおいて、いずれにおいてもβ2インテグリンCD11bが発現していることからこの分子はなんらかな役割を有することが示唆された。
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