研究概要 |
目的:臓器移植において現在最も重要な研究課題は慢性拒絶反応の抑制である。T細胞とマクロファージ双方の慢性拒絶反応における役割と機序はまだ明らかではない。我々は、マクロファージエフェクターの産生を抑制するγラクトン化合物を開発し、実験的にラット慢性腎拒絶反応を予防しえる結果を得ているのでマクロファージによる慢性拒絶反応の抑制機序の解明がより重要と考えている。 2年間における研究成果:ヒト腎移植慢性拒絶反応症例の移植腎浸潤マクロファージ上に発現されるβ2インテグリン接着分子のうちCD11b陽性細胞がすべて認められ、CD5陽性細胞より有意な所見を示した。このCD11b陽性細胞は、マクロファージ、あるいはCD5+B細胞、NK細胞の可能性がある。ラット腎障害モデルとして一側完全尿管閉塞-解除モデルを作成した。対照とした未処置群に比較して、閉塞解除腎は、形態学的に尿細管内腔の拡張と尿細管の萎縮および間質への細胞浸潤は著しく線維化を呈した。ED1およびβ2インテグリンCD11b陽性細胞は著明に糸球体および尿細管間質に増加していた。ケモカインレセプターのうち、CCR2,CCR5,CXR2,CXCR4,CX3Cr1のmRNAの発現は10倍から50倍に増加していた。CD5陽性細胞は少なかった。γラクトンを投与されたラットでは、線維化や萎縮が予防されて腎障害が軽減していた。 研究の総括:ラット腎虚血モデルにおいて、β2インテグリンCD11bが病変の強さの程度に依存するが、虚血時間の短い軽度の腎障害をうけた場合に、腎障害の程度を調節する機能を持つことを明らかにしている(Nephrol. Dial. Transplant.2000)。慢性腎障害は強い急性の組織障害を来すものではないので、β2インテグリンCD11bを有するマクロファージが慢性拒絶反応において重要な役割を有していることが示唆される。
|