今回の研究では、セレンを高濃度に含有するニンニク末によるマウス腎癌モデルであるRenca実験腫瘍系を用いて抗腫瘍効果およびアポトーシス誘導に関して検討した。 BALB/cマウスを用い同系自然発生腎癌・Renca実験系においてニンニク末の坑腫瘍効果を検討した。ニンニクは凍結乾燥粉末(日本凍結乾燥研究所、東京)でセレンの含有濃度は0.096ppmである。Renca皮下および腎皮膜下移植系において、ニンニクは用量依存的に有意な腫瘍増殖抑制効果を示した。また、ニンニク治療腫瘍は、RT-PCRにおいて対照腫瘍に比較しBaxおよびbcl-2 mRNAの高発現を、TUNNEL法において陽性細胞の増加を認めたことより、ニンニクによるアポトーシスの誘導が確認された。さらに、Renca腫瘍組織、Renca移植腎の腫瘍隣接正常部組織、健常腎組織およびマウス血清のセレン濃度を高周波誘導結合プラズマ質量分析法により測定した。Renca組織、腫瘍隣接正常部組織、健常腎組織のセレン濃度は、それぞれ0.41±0.002、1.12±0.023、1.24±0.18μg/g、担癌および健常マウスの血清濃度は、それぞれ348±46、548±15μg/gであり、腫瘍組織および担癌マウス血清のセレン濃度は有意な低値であった。さらに、担癌マウスにおいて、ニンニク治療により、Renca組織および血清セレン濃度は改善した。近年、疫学的研究により、ニンニクの摂取量と胃癌、大腸癌および喉頭癌の発生との間には負の相関があるや土壌にセレンを散布することにより癌死亡率を低下させたというフィンランドの報告およびセレンの摂取が皮膚癌の発生を低下させたする報告が注目されている。今回の結果は、ニンニクを介するセレン摂取が、腎癌治療および外科治療後再発の予防策として有用である可能性を示唆するものである。
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