研究概要 |
現在までのところ、正常ヒト近位尿細管細胞(RPTEC)および各腎細胞癌に対しての薬剤耐性因子の発現量および薬剤感受性と耐性因子阻害剤の効果について次の結果を得た。 1.RPTECおよびVMRC-RCW, OS-RC-2, TUHR14TKBのdoubling timeはそれぞれ24, 62, 31, 66hであった。それぞれの細胞の薬剤耐性因子(Pgp/MRP1/γGCS/V-ATPase/CRR9)の発現量はβ-actin発現量を100とすると、RPTECは55/10/32/11/50, RCWは135/0/71/10/174, OS2は88/57/0/0/189, 14TKBは85/105/38/4/185となり、耐性因子の発現は多様であった。また、RPTEC, RCW, OS2, 14TKBのGST活性(nmol/min/mg)はそれぞれ24, 16, 36, 21であり、この活性にGST-π発現量が相関した。 2.各細胞の薬剤96時間暴露すると、その耐性度は、CDDPに対してRCW>14TKB>OS2>RPTEC, DXRに対してRCW>14TKB>OS2=RPTEC, GSH-DXRに対してOS2>14TKB>RCW>RPTECとなり、いずれの薬剤に対してRPTECの感受性が最も高かった。 3.Pgp阻害剤Verapamilはその発現量に応じてDXRに対する感受性を上昇させ、γGCS阻害剤Buthionine sulfoximineはその発現量に応じてCDDPに対する感受性を上昇させた。しかし、GSH-DXRに対してはいずれの阻害剤の効果も認められなかった。 以上のことから、CDDPやDXRは薬剤耐性因子の影響を受けるが、GSH-DXRは耐性因子の影響を受けることなく、殺細胞効果を発揮できることが判明した。
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