研究概要 |
1、中心体の染色 膀胱がん細胞株と臨床検体で中心体を染色することができた。 膀胱癌培養株をスライドグラス状で成育させ染色標本として用いた。臨床検体はタッチスメアを用いて染色した。細胞の固定後、γ-tubulinで中心体を染色した。膀胱癌では,悪性度の低いG1腫瘍から悪性度の高いG3腫瘍までいろいろな腫瘍を認めが、悪性度の高いG3腫瘍で中心体の過剰複製をみとめた。G3腫瘍では染色体の不安定性も認めた。中心体過剰複製が生じる原因として、p53の異常とサイクリンEの異常について検討中である。p53は下流のWaf1を通してサイクリンEをコントロールし,G1Sの移行をコントロールしている。中心体の複製もG1S期に始まりG2期に完了する。この中心体の複製とDNAの複製は同調する必要がありこの同調が崩れると中心体の過剰複製が生じる可能性がある。さらにp53は,中心体の再複製のコントロールも行っておりp53の異常により中心体の再複製の制御も乱れる。 2、細胞周期毎の中心体複製について laser scanning cytometryにより中心体を細胞周期ごとにソーティングした。悪性度の低いG1腫瘍では、中心体はG1期ではひとつであり,S期になると2個になり,M期で紡錘体極となっていた。postmitotic cellでは1個の中心体を受け取っていた。悪性度の低いG1腫瘍では中心体制御が正確に行われていることが確認できた。 一方,悪性度の高いG3腫瘍では中心体を3個以上持つ細胞が35%を占めていた。細胞周期ごとにソーティングしてみると,より核が大きな細胞で過剰複製を示しており、特にM期の細胞では多彩な分裂像を認めた。 膀胱癌において,中心体の複製制御の機構を解明していくことが膀胱癌の染色体不安定性の機構解明につながり,さらには中心体複製をターゲットにした癌治療の開発へとつながっていくと考える。
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