本SEREX法では、基本的に自己癌組織と自己血青との組み合わせにより抗体の検出と、抗原の検出を行うシステムで、これまでに多くの研究者により多数の抗原系が検出されてきている。その結果、検出される抗原の多くは、正常精巣に発現することが知られており{Cancer testis 抗原(CT抗原)}、精巣細胞ではHLA-class I抗原が発現してないため、癌治療の細胞性免疫におけるT細胞の標的抗原として有望視されている。 本研究では、自己癌組織と自己血清の組み合わせのための検体として、前立腺癌1症例、また腎細胞癌5症例を集め、また、泌尿器系癌における高発現CT抗原の検出も重要と考え、正常精巣のライプラリーと患者血青との組み合わせを想定した患者血清のみの収集も前立腺癌で3例、腎細胞癌で10例行った。これら症例よりRNAを分離し、ライブラリーの作製を試み、前立腺癌症例についてはおよそ2.5x10^6pfuのライブラリが作製できた。 また、これまでに2症例の正常精巣の提供を受け、そのうち1症例についてライブラリーを作製した。正常精巣らのライブラリーについて、その有用性を、抗体の存在を確認している血清で検討したところ、多数のクローンが検出された。これらのクローンの遺伝子について配列を決定した結果、同一の遺伝子を持つクローンが多数認められ、最終的には現在までに7クローンが得られている。また、抗原名は明らかにできないが、自己免疫疾患等で検出さる抗原系も検出されている。 この結果から、ライブラリーの有用性が確認されたため、各種癌患者血清でのスクリーニングを継続していく予定である。
|