我々は酵母の塩分耐性因子HAL-1に機能的相補性のある遺伝子をラット腎よりクローニングし、Salt-tolerant protein(STP)として報告してきた。STPは、腎臓において近位尿細管に局在し、シグナル伝達に関与する蛋白質である可能性が高い。さらに最近、低分子量G蛋白Rhoファミリーの一員であるCdc42と相互作用を持つ蛋白として報告されたCIP4がSTPと同一蛋白であることが判明した。Rho蛋白は、アクチン細胞骨格の再編成を介して細胞の形態変化や運動、接着など多彩Fな細胞機能を制御し、癌細胞の悪性化、浸潤・転移に関与していることが明らかになりつつある。 (1)腎癌患者におけるSTP変異体の検索 当科外来及び入院腎癌患者よりEDTA採血後genomic DNAを抽出し、目的とする部分をPCRにて増幅しシークエンスにて変異体を検索した。予備実験の段階でヒト腎癌患者でSH3領域より上流に停止コドンをもつ変異体を見い出しているが、現在のところ同様の変異は見つかっていない。 (2)トランスジェニックマウスの作製 ホモ接合体の同定には至らず、過剰発現において致死的に作用する可能性もある。 (3)STP野生体、変異体黄色蛍光タンパク質発現系の確立 我々が分離同定したSTPの野生体、変異体遺伝子を、黄色蛍光タンパク質発現ベクターpEYFP-C1にクローニングし、COS-1細胞に発現する系を確立した。野生体では細胞質に、変異体では核近傍に発現を認めるが、現在、変異体の細胞内局在を検討中である。 (4)STP及びCdc42発現とアクチン等細胞骨格形成蛋白発現について 上記の遺伝子を発現した細胞において、アクチン、Cdc42タンパクの発現の変化について検討した。これらの結果については、現在、論文投稿中である。
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