平成13年度までの研究で前立腺癌の進展に関与する可能性が考えられたandrogen receptor (AR) coactivatorのひとつであるARA55についてヒト前立腺組織における発現を免疫組織染色を用いて調べた。抗体はARA55のアミノ酸配列をもとに作成した合成ペプチドを用いて作製したポリクローナル抗体であったが、Western blottingを行うと非特異的なバンドが多数みられたので精製を行った。その後再度Western blottingを行い、ARA55のplasmidをもとに発現させた蛋白、ARA55mRNAの発現があるPC3細胞、およびARA55を導入したLNCaP細胞においてARA55に特異的と考えられる1本のバンドを認め、ARA55に特異的な抗体である事を確認した。この精製後の抗体を用いて再度ヒト前立腺組織において免疫組織染色を開始した。検体としては術前にホルモン療法を施行していない前立腺癌で前立腺全摘除術を行った標本を集積し、同一標本で癌、肥大症(正常)部分が検討できるように全割標本を作成した。標本が大きいためか染色が不均一になる傾向があったため染色方法の改良を行い、ほぼ良好な染色が得られるようになった。その標本を用いてARA55の発現強度と病理学的所見との相関を検討しているが、現時点では肥大症と癌との間に明らかな染色強度の違いは認められていない。現在、癌のなかでの悪性度の違いによるARA55の発現の違いについて検討している。また、ホルモン療法を行った症例(進行例)で治療前の生検標本を用い治療への反応性とARA55の発現強度について検討している。
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