前立腺癌のホルモシ抵抗性のひとつの機序としてホルモン療法中のような低濃度のアンドロゲンに反応する、つまりandrogen-hypersensitiveという状態が考えられる。以前我々が樹立した細胞株LN-TR2は親株のLNCaP細胞よりandrogen-hypersensitiveな細胞である。このandrogen-hypersensitiveである機序としてアンドロゲン刺激後にLN-TR2ではLNCaPに比べ核内のAR蛋白量が増加している事、AR coactivatorであるARA55とTIF2の発現が増強している事を確認していた。そこで、LNCaPにおいてこれらのAR coactivat-orのARの転写活性における影響をPSA promoterを用いたluciferase assayで検討した結果、これらがLNCaPにおいてもAR coactivatorとして作用する事がわかり、ARA55の方が転写活性増強効果が高かった。この事はARA55のようなAR coactivatorが十分に存在するような前立腺癌細胞では低アンドロゲン状態においてもARの転写活性が発揮され、癌細胞が生存、増殖可能であると推測された。また、LN-TR2がandroger-hypersensi-tiveである機序としてARの遺伝子変異も推測されたため、ARの核内移行に重要なhinge region、アンドロゲン感受性に重要なligand binding domainの塩基配列を調べたが、LNCaPとLN-TR2間に遺伝子変異は認めなかった。よって遺伝子変異によるアンドロゲン感受性の変化ではなかった。よって、LN-TR2がandrogen-hypersensitiveである機序としては核内のAR蛋白量が増加、およびAR coactivatorであるARA55とTIF2の発現が増強が考えられた。ヒト前立腺組織においてARA55は間質よりも上皮、癌細胞に多く発現していた。以上より、前立腺癌細胞はARA55を発現し、ARA55の発現増加がホルモン抵抗性のひとつの機序と予想された。
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