本年度は、生直後の短期間のエストロゲン暴露が、成長後の前立腺に及ぼす影響を組織学的に検討するともとに、エストロゲン受容体の発現について免疫組織学的に検討した。 生直後のワイルドアイプのマウスに生後1日から3日にかけて、合成エストロゲンであるDESを0.5マイクログラム投与し、60日後の前立腺の腹葉と後側葉を微小解剖し腺管構造の分枝発生の変化を観察した。テストステロンレベルは、DES投与群はコントロール群に比べ約70%減少し、前立腺の腺管形態発生に関しては、腺管端数において腹葉で約60%、後側葉で80%の減少を示した。さらにDES投与群での約90%には異常腺管構造が認められた。なおこの異常構造は異形上皮と間質の増勢を認めるが悪性所見は認めなかった。 前立腺におけるエストロゲン作用の機構を解明するためにも、前立腺におけるエストロゲンアルファー受容体の発現を免疫組織学的に検討したが、実験に使用し成長後のすべての前立腺においてその発現を認め、発現量は凝固腺>後側葉>腹葉の順に多く前立腺葉間での異質性を示した。発生初期の生直後の前立腺においては、腺管の上皮細胞には検出されず、尿道近くの腺管周囲の間質細胞の核内にエストロゲンアルファー受容体の発現を認めたが、遠位(腺管先端部)においての発現は認めず、エストロゲン受容体は前立腺腺管内での異質性を示した。 来年度はエストロゲンベータ受容体の正常前立腺における発現を検討するとともに、エストロゲン受容体ノックアウトマウス(aERKO)における、前立腺の巨視的および組織学的な検討を行う予定である。
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