研究概要 |
[方法]医学部附属動物実験施設動物実験委員会の承認を得,Suffolk種ヒツジの妊娠120日(満期145日)に胎仔(n=6)の頚動静脈と羊水腔にカテーテルを留置して慢性実験系を作成した.対象を3群に分け,G-CSF群(n=3)では妊娠125日からlenograstim 50μg/dayを5日間静注し,対照群(n=2)では生食を投与した.G-CSF+Endotoxin(G+E)群(n=1)ではlenograstim投与中の妊娠127日にendotoxin 20mgを羊水腔内に1回注入した.妊娠130日に帝王切開し,新生仔に対して間欠的陽圧換気下に酸素投与して,呼吸窮迫症候群と動脈管開存の予防的治療(surfactant TA,indometacin投与)を行い,日齢10に肺を灌流固定して病理検索に供した.新生仔の動脈血好中球数(PMNc),Ventilatory Index(VI),Ventilatory Efficacy Index(VEI),動肺compliance(Cdyn),胸部X線写真(CXR)の経時的変化と病理所見を3群間で比較した. [成績]妊娠130日のPMNc(/μl,平均値)は対照群1240,G-CSF群22970,G+E群19440であった.酸素化はG+E群(VI>0.4,日齢2)で悪化し,換気は対照群(VEI>0.15,日齢8〜10)のみに回復傾向を認め,Cdynでは3群間に明らかな差はなかった.CXRにて小円形気腫像をG+E群のみに認めた.病理学的に,卵膜炎/絨毛膜板炎をG-CSF群(I〜III)とG+E群(III)に,臍帯炎をG+E群のみに認めた.肺の病理組織学的検索では,肺硝子膜症,気管支肺異形成,間質性肺気腫は3群ともに認められず,G+E群のみに肺胞性肺気腫,多発性小嚢胞性病変,巣状無気肺を認めた. [結論]Wilson-Mikity症候群の発現には,胎生期における好中球数増加のみならずその活性化が本質的に重要である可能性が強く示唆された.
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