本年度は昨年度の実績をふまえて、異常発現を認めたHOX遺伝子のアンチセンスDNAの作成を行い、これを遺伝子導入し癌細胞がどのようにその性質を変化させるかを解析した。子宮体癌と卵巣癌に共通して過剰発現が認められたHOXB13をアンチセンス導入の標的遺伝子としHOXB13遺伝子の過剰発現を抑制することで癌細胞の浸潤能にどのような影響があるかを検討した。アンチセンス用PCR遺伝子産物を作成しベクター(pGEM-Teasy)に結合後大腸菌にトランスフォームされ、もう一つのベクター(pcDNA3.1)にライゲーションされ遺伝子導入用ベクターとされた。遺伝子導入に当たっては、ジーンパルサーを用いたエレクトロポレーション法が用いられた。導入用の癌細胞には子宮体癌細胞ではAN3CA細胞、卵巣癌ではSKOV3細胞が使用された。電気パルスにて導入培養の後、G418を用いて導入細胞と非導入細胞の選別が行われた。5日間の再培養のあと細胞の一部が回収され遺伝子の導入がベクター由来のネオマイシン配列を利用したPCR法にて確認された。引き続きこのHOXB13アンチセンス導入癌細胞の転移浸潤能が非導入細胞に対して低下しているかどうかを確認するためにマトリジェルアッセイを行った。5X10^4個の細胞をマトリジェルチャンバー上に乗せ、その後12時間、24時間、36時間、48時間、72時間培養しマトリジェルを通過しメンブレンに固着した細胞のカウント行った。非導入細胞にて同様の計測を行い、これを正常対照とし、遺伝子導入細胞でどの様に変化するかを計測した。その結果子宮体癌細胞と卵巣癌では異なる変化を示した。マトリジェルアッセイから子宮体癌細胞では72時間の培養にて完全に浸潤能が低下し以後も浸潤能が回復することはなかったが、卵巣癌細胞では36時間培養までは時間毎に浸潤能の低下が観察されたが、それ以降も培養を続けると次第に浸潤能が回復してくることが観察された。
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