卵巣癌細胞株および臨床卵巣癌組織でのTGF I型レセプター発現検討結果により、TGF I型レセプターの卵巣癌細胞株における変異や欠失を見いだし、報告した。また、臨床検体においても約30%の症例でタンパクレベルでの発現欠失を見いだし報告した。そこで、癌抑制シグナル伝達経路の重要な因子であるTGF I型レセプター補充療法による卵巣癌制御の可能惟を検討するため、アデノウイルスpAxCAwtにTGFR I wtを組み込み、高力価発現ウイルスの作成実験を行った。 TGFR I wt遺伝子をpAxCAwtに組み込み、プラスミドとしてサブクローニングし、制限酵素切断により、インサートおよび方向の確認を行った。これをGIGApacIIIというキットを用いてコスミドベクターに組み込んだ。これを293細胞にトランスフェクションし、一次ウイルス液約100サンプルを回収した。さらに、二次ウイルス液作成のため、293細胞にインフェクションさせ、同時にHeLa細胞にも感染させ、293細胞を破壊し、HeLa細胞を破壊しないウイルス液約30サンプルを得た。これらのウイルスの状態を制限酵素切断により確認し、野生型ウイルスの混在を否定した。正しくインサートの入っているウイルス液から、三次ウイルス液を作成したが、大量培養では293細胞を破壊するようなウイルス液が得られなかった。二次ウイルス液を用いてTGFβ蛋白発現低下卵巣癌細胞株にインフェクションさせ、増殖抑制効果を検討した。抗体価が低いためか、抑制効果は乏しかった。
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