研究概要 |
1)小腸のトキソプラズマに対する感染抵抗性の妊娠による変化 (1)妊娠マウス(n=7)の小腸のparasitophorous vacuole数は非妊娠マウス(n=8)に比べ、3.1倍有意に高値であった(691±285(mean±S.D.以下同様)vs.225±133;p=0.0022)。 (2)小腸におけるトキソプラズマの感染状態は、びまん性ではなく炎症性フォーカスを作り散在性であった。妊娠マウス(n=7)の小腸の炎症性フォーカス数は非妊娠マウス(n=8)に比べ、3.7倍有意に高値であった(24.3±8.0 vs.6.8±1.5;p=0.0003)。 (3)そこでフォーカスあたりのparasitophorous vacuole数を計算した。妊娠マウス(n=7)と非妊娠マウス(n=8)のparasitophorous vacuole数/フォーカスは有意差を認めなかった(26.1±7.4 vs.18.4±7.0;p>0.05)。すなわち(1)妊娠マウスの小腸でのタキゾイトの増加は炎症性フォーカス数の増加によることが示された。 2)その他の臓器のトキソプラズマに対する感染抵抗性の妊娠による変化 (1)妊娠マウス(n=9)の子宮のparasitophorous vacuole数は非妊娠マウス(n=12)に比べ、34.3倍有意に高値であった(9.94±9.30 vs.0.29±0.75;p=0.0003, Mann-Whitney U-test)。 (2)妊娠マウス(n=6)の卵巣のparasitophorous vacuole数は6.1±11.3で、非妊娠マウス(n=10)は0であった(p=0.0014, Fisher's exact test)。 (3)トキソプラズマは経口的に感染すると、腸管から侵入し門脈を経て肝臓に到達し、次に血流を介し全身の臓器に播種する。すなわち、肺、心、子宮、卵巣は感染巣として同様の条件と考えられる。ところが妊娠マウス(n=7)の肺、心のparasitophorous vacuole数は非妊娠マウス(n=7)に比べ、それぞれ3.8倍、2.2倍で子宮に比し低値であった。 (2)妊娠により子宮は、他臓器に比べ特異的に著明にタキゾイトが集積する。 上記(1)、(2)のメカニズムにより、妊娠マウスではトキソプラズマに対する感染抵抗性が低下し、トキソプラズマの母子感染が生じやすくなることが示された。
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