研究概要 |
1)小腸のトキソプラズマに対する感染抵抗性の妊娠による変化 (1)妊娠マウスの小腸のparasitophorous vacuole数は非妊娠マウスに比べ、3.1倍有意に高値であった(p=0.0022)。 (2)小腸におけるトキソプラズマの感染状態は、びまん性ではなく炎症性フォーカスを作り散在性であった。妊娠マウスの小腸の炎症性フォーカス数は非妊娠マウスに比べ、3.7倍有意に高値であった(p=0.0003)。 (3)妊娠マウスと非妊娠マウスのparasitophorous vacuole数/フォーカスは有意差を認めなかった(p>0.05)。すなわち妊娠マウスの小腸でのタキゾイトの増加は炎症性フォーカス数の増加によることが示された。 2)その他の臓器のトキソプラズマに対する感染抵抗性の妊娠による変化 (1)妊娠マウスの子宮のparasitophorous vacuole数は非妊娠マウスに比べ、34.3倍有意に高値であった(p=0.0003,Mann-Whitney U-test)。 (2)妊娠マウスの卵巣のparasitophorous vacuole数は6.1±11.3で、非妊娠マウスは0であった(p=0.0014,Fisher's exact test)。 (3)トキソプラズマは経口的に感染すると、腸管から侵入し門脈を経て肝臓に到達し、次に血流を介し全身の臓器に播種する。すなわち、肺、心、子宮、卵巣は感染巣として同様の条件と考えられる。ところが妊娠マウスの肺、心のparasitophorous vacuole数は非妊娠マウスに比べ、それぞれ3.8倍、2.2倍で子宮に比し低値であった。 妊娠により子宮は、他臓器に比べ特異的に著明にタキゾイトが集積する。 以上の巧みな機構により、妊娠マウスに感染したトキソプラズマは母子感染しやすい環境を作り、母子感染を生じさせている。
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