胎児の心肥大が生後の神経学的障害と関連することを示唆する報告が相次いでいることより、胎児の心機能異常と中枢神経系傷害との関連を明らかにすることは、生後の神経学的障害を予防するための大きな手掛かりとなる可能性がある。そこで本研究においては、臍帯圧迫を加えることにより、胎児の心機能及び脳血流がどのような影響を受けるか、さらに、心機能の変化と脳血流の変化とは相互にどのような関連を有するかについて妊娠ヒツジを用いて検討した。 初年度は部分臍帯圧迫の反復による脳血流の変化について検討した。本年度は胎児左心室内にコンダクタンスカテーテルを挿入、頭皮下に近赤外光血流プローブを装着し、臍帯圧迫を加えることによる心機能と脳血流量の反応について検討した。妊娠130日前後の妊娠ヒツジを対象とし、ハロセン気管内麻酔下にて帝王切開を行い、胎児の一部を子宮外に露出させ、下大静脈にバルンカテーテルを、左心室にコンダクタンスカテーテルを超音波ガイドの下で留置した。腹部大動脈には胎児血採血用のカテーテルを留置した。胎児頭皮下には近赤外光血流計測装置を装着した。準備手術が終了した状態で、左心室の圧容量曲線を記録し、さらにバルンカテーテルによる下大静脈血流の遮断、臍帯圧迫による臍帯血流の遮断を行い、それに伴う左心室圧・容量曲線の変化、脳血流の変化を記録保存した。現在、データの解析中であり、各種心機能の変化と脳血流量の変化との関連性を検討している。
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