研究概要 |
子宮内膜症は近年増加傾向にあることが報告されており、婦人科臨床においては重要な課題となっている。また、その増加には内分泌攪乱化学物質が関与していることが示唆されている。将来の本格的な遺伝子治療のための基礎的検討として、子宮内膜症において中心となる諸因子(増殖因子・受容体その他)を検討し、ついでprimary cultureを用いた実験系において問題となる増殖因子及びその受容体、結合蛋白発現のregulationを内分泌攪乱化学物質存在下に解析し、子宮内膜症のin vitroモデルの開発を検討することを目標にした。 結果、正常子宮内膜の培養系において様々なリガンドについて検討してみたが有意な結果は認められていない。また、様々な増殖因子と2,3,7,8,-tetrachlorodibenzo-p-dioxin(TCDD)やbisphenol A(BPA)等の代表的な内分泌攪乱化学物質を同時に投与し、併用による相加あるいは相乗効果を検討しているがこれについても有意な結果は得られていない。 一方、子宮内膜症との関連が指摘されている卵巣明細胞腺癌細胞株であるES2細胞において、TCDDの作用を検討した。この細胞株においてTCDDが細胞増殖を濃度依存性に活性化させることが確認された(高濃度では抑制)。子宮内膜症との関連を直ちに証明するものではないが、他の報告にあるような免疫機序とともにTCDDが子宮内膜症の発症増悪因子となっている可能性を示唆するものと思われた。 また、卵巣癌腺癌細胞株CAOV-3細胞において、培地の添加血清の濃度条件によって、TCDDに対する反応性が変化する現象も確認しており、単純なホルモン環境以外の因子が複雑に影響している可能性に注目している。
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