Placental leucine aminopeptidase(P-LAP)は妊娠中のオキシトシナーゼの本体であり、胎児胎盤系におけるオキシトシナーゼの病態への関与について引き続き研究を行った。絨毛羊膜炎を代表とする胎盤局所の炎症は早産の主たる原因と考えられている。サイトカインを介して誘導されたプロスタグランジンによる子宮収縮がその一つの病因であるが、オキシトシン拮抗剤による早産治療の報告もあることからオキシトシンの関与も示唆されている。我々のゲノムクローニングによって得られたP-LAP遺伝子の上流域に炎症性サイトカインの応答領域が複数存在した事から、同部位を介したオキシトシナーゼの抑制が相対的なオキシトシンの活性上昇につながり、子宮収縮を引き起こすと仮説をたて検討を行った。予想に反し、絨毛細胞モデルとして用いたBeWo細胞において、炎症性サイトカインIL-1βはP-LAP活性、蛋白発現とも増加させた。また、このP-LAPの蛋白増加は新たな蛋白の合成を介したmRNAの誘導を伴っていた。転写活性の検討において、P-LAPのmRNAの誘導は、予想されたサイトカイン応答領域を介したものではなかった。絨毛羊膜炎を伴ったヒト胎盤のP-LAP免疫染色において、炎症細胞の浸潤の著しい部位にP-LAP染色は強く、実際の胎盤局所でもサイトカインを介したP-LAPの誘導が起こっている事が示唆された。また、本年にはP-LAPの胎盤微細構造における局在を電子顕微鏡を用いて検討し、合胞体細胞の微絨毛に存在する事を明らかにできた。P-LAPの類縁酵素であるAPAについても合胞体細胞の微絨毛に局在する事が判明した。
|