研究概要 |
1 CD26のcDNAを発現ベクター(pcDNA3.1)に組み込み卵巣癌細胞(SKOV3)に遺伝子導入(SKDPIV)したところ、ベクターのみ遺伝子導入した細胞(SKpcDNA)は親株と変化がなかったがSKDPIVでは有意に腹膜中皮細胞との接着が亢進する事、本接着は細胞外基質の添加で更に増強されるがファイブロネクチン添加により最も増強される事を既に報告した。DPPIVモノクローナル抗体を用いて中和実験を実施したが接着性に変化は見られなかった。今後は酵素活性のないmutantを作成して実験する予定である。 2 SKDPIV細胞ではカドヘリンが高発現しており、細胞形態の変化(紡錘形から敷石状)はカドヘリンによるものと示唆された。またβカテニンも増加しておりカドヘリン経由の情報伝達が亢進していると考えられた。 3 DPPIV高発現株では接着性は亢進するものの運動能・浸潤能およびMMP2は逆に減弱していた.これらの減少は2種類の独立したDPPIV酵素活性阻害剤(DFP : Diisopropyl Fluorophosphate, Diprotin A)の影響を全く受けなかった。またMMP-2,膜型タイプ1MMPの発現減少とTIMP1,TIMP2の発現上昇を認めた. 4 in vivoのDPPIVの働きを明らかにするために、遺伝子導入卵巣癌細胞株をヌードマウスの腹腔内に移植(i.p.)した.i.p.後30日の時点の開腹所見であるが、親株及びMOCK細胞株を移植した群では播種は腹腔内全体に及び典型的な癌性腹膜炎の状態を示していたのに比較して,DPPIV導入株の移植では肉眼的に明らかな腹腔内腫瘍の形成を認めなかった。SKOV-3親株,MOCK,及びDPPIV導入株の移植によるマウスの平均生存日数はそれぞれ,35.7±2.8日,36.6±1.8日,及び64.9±4.7日であり,DPPIV導入株移植群では約2倍に平均生存日数の延長を認めた。
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