研究概要 |
1.dipeptidylpeptidase IV(CD26)の発現を子宮内膜癌で免疫組織染色にて調べた。その結果未分化になる程染織性が減弱していた。2.CD26のcDNAを卵巣癌細胞(SKOV3)に遺伝子導入(SKDPIV)した。遺伝子導入細胞(SKDPIV)は増殖能には変化が見られなかったが浸潤能、運動能ともに著明に現弱していた。ベクターのみ遺伝子導入した細胞(SKpcDNA)は親株と変化がなかったがSKDPIVでは有意に腹膜中皮細胞との接着が亢進した。SKpcDNAでは親株と同様の紡錘形細胞であるがSKDPIVでは敷石状となり細胞間の接着が密になっていた。3.腹膜中皮細胞に悪性腹水中には多量に存在している各種サイトカインを添加したところIL-1β,TNFα,VEGFでは濃度依存性に発現亢進を認めた.一方、TGFβ1では濃度依存性に発現が抑制された.IL-1β,TNFαはCD26の基質となる事が報告されており生体のホメオスタシス維持に働いていると考えられる。しかしながら癌細胞から見ればCD26を高発現する中皮細胞は接着の好条件を備えていると言える。4.SKDPIV細胞ではカドヘリン、βカテニンが高発現していた。またMMP-2,膜型タイプ1MMPの発現減少とTIMP1,TIMP2の発現上昇を認めた.5.遺伝子導入卵巣癌細胞株をヌードマウスの腹腔内に移植(i.p.)した.i.p.後30日の時点の開腹所見では、親株及びMOCK細胞株を移植した群では播種は腹腔内全体に及び癌性腹膜炎の状態を示していたのに比較して,DPPIV導入株の移植では肉眼的に明らかな腹腔内腫瘍の形成を認めなかった。SKDPIV株移植群では約2倍に平均生存日数の延長を認めた。6.DPPIVの基質であるSDF-1α投与によりSKOV3の増殖、浸潤の亢進を認めたが、SKDPIVではその作用が認められなかった。
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