研究概要 |
子宮内膜症患者腹水中には高濃度のInterleukin-8(IL-8)とTumor necrosis factor α(TNFα)が存在すること,IL-8は内膜症由来の培養間質細胞の増殖を促進することを明らかにした.本研究では,抗サイトカイン薬の子宮内膜症に対する効果について内膜症細胞を用いて基礎的検討を行うとともにマウス子宮内膜症モデルを作成して検討した. TNFαには,IL-8産生と子宮内膜症間質細胞の増殖を促進する作用があり,その作用は抗TNFα抗体のみならず抗IL-8抗体あるいはIL-8アンチセンスの添加によっても中和された.したがって,TNFαはIL-8のオートクリン作用を介して子宮内膜症細胞の増殖を促すことが示された.次に,子宮内膜症細胞におけるTNFαによるIL-8産生誘導がNF-kBの活性化を介するか否かを検討した.子宮内膜症細胞にTNFαを添加すると,5分後にはI-kBのリン酸化が発現した.TNFα添加により活性化NF-kBが誘導されることをEMSAにて示した.NF-kB阻害剤であるTPCKを前投与するとTNFαによるIL-8産生誘導が抑制された.以上から,子宮内膜症細胞におけるTNFαによるIL-8産生はNF-kBを介する可能性が示された.したがって,TNFα,NF-kBそしてIL-8の経路を遮断することで子宮内膜症細胞の増殖を制御できる可能性が示された. ヒト子宮内膜組織片移植によるマウス子宮内膜症モデルを作成した.同意の得られた手術患者の摘出子宮から子宮内膜組織を分離し,ヌードマウスに移植した.子宮内膜組織の接着率は,マウスあたり14/16(94%)であり,移植片あたり28/96(29%)であった.組織学的検索によっても内膜組織片の接着が証明された.この動物モデルを用いて,抗TNFα抗体などの内膜症に対する効果について検討中である.
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