研究概要 |
着床のための子宮内膜の機能的成熟には腺上皮細胞と間質細胞の相互作用が重要であることを明らかにするため、両者の細胞を共培養することによってそれぞれの細胞の単独での培養と比べ、細胞の機能が促進されるかを検討した。(1)子宮内膜から間質細胞と上皮細胞を分離し、間質細胞は6ウエル培養プレートに定着させ、上皮細胞は、マトリゲルをコートしたインサート上に定着させた。その後、間質細胞のウエル内に上皮細胞が定着したインサートを入れ相互作用ができるようにし、estradiol(E;10^<-8>M)またはmedoroxyprogesterone (MPA;10^<-6>M)の存在下で3日間培養後、上皮細胞については、着床に不可欠であるLeukemia Inhibitory Factor (LIF) mRNA発現を測定した。間質細胞と共培養するとEは上皮細胞のLIF発現を有意に増加させたが、間質細胞がない条件では有意な変化はなかった。すなわち、Eが間質細胞に作用し、何らかの物質の産生を介し、上皮細胞からのLIF産生を増加させていることが明らかとなった。Pは上皮細胞に直接作用しLIF発現を増加させたが、Eの間質細胞を介したLIF増加作用を抑制した。すなわち、Pも間質細胞を介して上皮細胞の機能を制御していると考えられた。2)間質細胞の成熟分化の指標として、脱落膜化に一致して増加するsuperoxide dismutase (SOD)を用いることとした。まず、SODの発現調節を検討したところ、progesteroneは、cAMPを介してMn-SODを増加させたがCu, Zn-SODはcAMPを介さない経路でprogesteroneにより増加した。E+MPAで12日間培養した後、E+MPAを除いて培養すると、Cu, Zn-SODは漸減したが、Mn-SODは影響されなかった。さらにMn-SODはcytokineなどの影響をうけるため、間質細胞の成熟分化の指標としてはCu, Zn-SODを用いることが妥当と考えられた。子宮内膜の機能的成熟における腺上皮細胞と間質細胞の相互作用が示され、着床成立に関する子宮内膜側の因子の解明につながるものと考えられる。
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