研究課題
近年の超音波断層法の急速な進歩によって脳室周囲白質軟化症(periventricular leukomalacia)が発見され、今日、脳性麻痺の重要な原因として注目されている。しかし、その病態、発症機序について十分に明らかにできていない。本症の病態を解明し、受傷前にその予知を行うことができれば、心身障害の発生の予防に極めて重要である。Heme oxygenase (HO)は肝臓、脾臓などにおいて強く発現し、一酸化炭素(CO)を生成するが、肝微小循環においてはNOではなく、COが循環抵抗制御の主役を担っていることが明らかになってきた。また、HOによって同時に生成されるhemineとともに血小板凝集抑制作用を有し、局所循環に対して保護作用をもつ。そこで、我は、ラットを用いて胎児、新生児期を通したHOの脳における発現状態について検討した。その結果、HOがこれらの時期を通して脳において広く発現していることが明らかになった。現在、胎児期から新生児期にかけて一過性脳虚血を負荷し、脳内の局所におけるHOの発現量とアポトーシス感受性との関連について検討中である。また、脳室周囲白質軟化症好発部位を灌流するレンズ核線状体動脈の循環動態についてパワードプラ法を用いて検討した。その結果、正常新生児および胎児では、レンズ核線状体動脈は前大脳動脈や中大脳動脈に比較して極めて低い血管抵抗を示すこと、血流速度が緩やかであること明らかとなり、この領域に特殊な循環調節機構が存在することを示唆した。
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