研究概要 |
前期破水によって脳室周囲白質軟化症が発症するリスクが高まることが報告され,その発症機構に炎症性サイトカインの関与が示唆される.そこで今回,炎症性サイトカインであるTNF-αが脳微小循環に与える影響について検討した. ペントバルビタール麻酔下にcranial window法を用いてラット脳微小循環を観察した.ノルエピネフリン(NE) (n=5)またはアンジオテンシンII (ATII) (n=5)をそれぞれ0.01〜10μg/kg/min投与し,細動脈の反応を検討した.次にATII(1μg/kg/min)投与6時間前にTNF-α (25μg/kg)を腹腔内投与して対照群と比較した(n=5).さらにTNF-αの前投与時に抗ICAM-1抗体(1mg/kg)を投与して反応性の変化を検討した(n=5). NE0.01,0.1,1,10μg/kg/min投与時の血管収縮率(mean±SD(%))は4±3,15±10,24±12,28±15,ATII投与では4±5,7±4,6±5,7±5であった.NE投与では用量依存性の収縮を認めた(p<0.01)が,ATII投与では有意な変化を認めなかった.TNF-αの前投与によってATII投与による収縮率は22±16と対照群の8±6に比較して有意な収縮を認めた(p<005).この収縮反応は抗ICAM-1抗体によって抑制された. NE投与によって細動脈が収縮したがATII投与では収縮せず,脳における血管反応の特異性を示した.TNF-αの前投与によってATII投与による収縮を認めるようになったが,抗ICAM-1抗体がこの収縮反応を中和したことからTNF-αが接着反応を介して脳微小循環に作用することが示唆された.
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