アデノウイルスを用いた遺伝子治療は、肺癌、頭頚部癌、卵巣癌等の多くの再発性進行癌に既に臨床試験が行われ10-30%程度のresponse rateが得られている。前癌病変であるCINに対してはさらなる効果が期待できるが、従来用いられているプロモーターが主としてCMV(cytomegalo virus)由来のものであり臓器特異性がないため、リンパ行性あるいは血行性に卵巣内の胚細胞への感染が心配され、またアデノウイルスの特性である肝臓への集積性についても問題とされている。このため、子宮頚部扁平上皮特異的に発現するプロモーターの開発が必要とされる。我々は、既にSCCA1の遠位プロモーター部分に扁平上皮組織に特異的に活性の高い領域の存在することを明らかにしており、今回、このプロモーター領域の詳細な特定により子宮頚部上皮内腫瘍に対する遺伝子治療の可能性について検討した。 ClontechのEMBL3 SP6/T7 phage genomic libraryよりクローニングしたphage DNAには、SCCA1の転写開始点より上流4kbの領域が含まれその配列を明らかにしていたが、さらにSCCA1遺伝子の塩基配列をさらに上流4kbの塩基配列をautomated DNA sequencer (model 373A ; Applied Biosystems)により決定した。この領域、すなわち転写開始点より上流8kbにおいては特にホルモン結合部位は認められなかった。SCCA1遠位プロモーター部位のdysplasia病変における活性を特定するために、mild dysplasia、moderate dysplasiaの細胞株に加え、さらにsevere dysplasia、CIS、子宮頚部由来正常ケラチノサイト、子宮頚部由来HPV感染ケラチノサイトの各細胞株の樹立を行った。 各deletion mutantにおいてluciferase活性を測定し、転写開始点より上流8kbまでのSCCA1遠位プロモーター領域の特定を行うため、500bp毎の各deletion mutantの作成を行った。
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