研究概要 |
子宮頚癌は、進行癌が減少傾向にり、若年者において子宮頚癌の前癌病変である異形成(dysplasia)等の子宮頚部上皮内腫瘍(CIN)が増加傾向にある。子宮頚癌はその原因としてHPVの感染が強く示唆されており、90%にHPVの感染が認められる。CINに対する治療としては、最近、光線力学的治療法(PDT)、レーザー切除、円錐切除等の治療が行われているが、根治性と妊孕性の維持において問題とされる。以上により、妊孕能の保存を必要とする若年女性のCIN病変に対する有効な治療法の確立が求められている。SCCA1遺伝子は、扁平上皮癌細胞より抽出され、正常扁平上皮及び扁平上皮癌に発現する。今回、SCCA1遺伝子プロモーターをクローニングしそのプロモーター活性の特定を行った。CIN細胞におけるプロモーター活性の特異性を検討するため、mild dysplasia、moderate dysplsia、severe dysplasia, CISの各細胞株の樹立を行った。近位プロモーター領域の500bpでは、扁平上皮癌組織に特異性があり、遠位プロモーター領域の3.7kbの領域では、CIN細胞に特異性のあることが明かとなった。この遠位プロモーター領域をアデノウイルスベクターに導入し、p53遺伝子発現を試みるため、CIN特異的アデノウイルスベクター(Adenovirus-SCCA1-3.7-p53)を作成し、樹立した各CIN細胞株と扁平上皮癌細胞株、他の腺癌細胞株とにおいて組織特異的増殖抑性効果を検討したところ、CIN細胞株に特異的にapoptosisの誘導及び増殖抑性効果の発現することが明かとなり、CIN病変に対する有用な治療法の可能性となることが示唆された。
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