1.IUGRの診断および管理 当院で分娩予定の妊婦300例を対象に超音波断層法による胎児発育の推定を行い、発育遅延胎児IUGRを抽出した。また発育不全の原因を知る目的で、IUGR胎児に対しては心拍数モニター、超音波断層法による胎児形態検索、超音波ドプラ法による子宮動脈血流および臍帯血流の評価を行った。その結果、発育遅延が重度(-2SD未満)であり、かつその原因が明らかでなかった12例が抽出された。 2.検体の収集および保管 上記12例のIUGRについて、両親の許諾の基に、胎盤および臍帯血、両親の血液を採取してこれを保存した。また、対照として正常発育胎児の検体の一部を同様に保存した。 3.CPMの検索 上記12例について、胎児および胎盤の染色体検査を行ったところ、胎児および胎盤のいずれも染色体異常であったものが2例存在したが、胎盤のみに染色体異常を認めたもの(CPM)はなかった。しかし、染色体異常を除いた10例の重度IUGRのうち2例については体幹の左右差や特徴的な顔貌からシルバー・ラッセル症候群と診断され、遺伝子異常の存在が示唆された。今後はさらに症例数を重ねるとともに、重度IUGRの発症原因について、細胞遺伝学的ならびに分子遺伝学的解析を予定している。
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