まずは、hMG反応不良排卵障害症例に対する卵胞発育改善効果に関し、より効果的なM-CSFの投与量や投与期間の検討を行った。過去のhMG療法において成熟卵胞発育が全く認められないか、認められてもわずか1個であったhMG poor responder症例で、infomed consentの得られた症例に対して、hMGとともにM-CSF(ロイコプロール)の併用療法を行った。事前に、各症例の内因性GHの分泌予備能をみるためにクロニジンテストを施行した。hMG 150iu/dayをday3より開始し、M-CSF800万単位をday3より隔日3回、あるいは隔日7回点滴静注した。なお、IVF-ET症例においてはGnRHa(スプレキュア)をshort protocolでday2より併用投与している。 その結果、クロニジンテスト正常群(内因性GHの分泌予備能が正常)では7/8例、7/9周期において径18mm以上の卵胞発育を少なくとも2個以上認め、hMG使用量も減少した。このうち2例に妊娠が成立し、1例は分娩に至り、健児を得ている。クロニジンテスト低反応群(内因性GHの部分的分泌不全)では3/5例、3/6周期おいて径18mm上の複数の卵胞発育を認めた。一方、クロニジンテスト無反応群(内因性GHの分泌不全)では5例、6周期においてM-CSF併用療法を行ったが、18mm以上の卵胞発育を認めたのは1例、1周期のみであった。 以上の結果から、M-CSFは卵胞発育に促進的に作用し、特にGH分泌予備能が保たれているpoor responder症例に対して有効と考えられ、現在、さらなる症例の追加ならびに各発育段階にある卵胞や顆粒膜細胞におけるM-CSF・c-fmsの発現とその局在についても検討を進めている。
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