子宮内膜症の病因は未だ明らかではないが、遺伝的因子との関連が指摘されており、近年いくつかの解毒関連酵素遺伝子の遺伝子多型と本症の発生との関連が急速に報告されてきた。本疾患がエストロゲン依存性に発生増殖することから、我々エストロゲン・レセプターα遺伝子のイントロン1上にある1塩基多型が本疾患のリスクに関連することをすでに発表した。今回の研究においても、学内倫理委員会の承認のもと、個人からの同意のもとに採取した末梢血から得たゲノムDNAを検体として、遺伝子多型と子宮内膜症との関連について検討し、下記の結果が得られた。 1.インターロイキン10遺伝子のプロモーター領域の1塩基多型:-592*CC遺伝子型および-592*Cアリルは、抗carbonic anhydrase自己抗体を持つ子宮内膜症患者において対照群に対して有意に上昇していた。 2.CYP17遺伝子(アンドロゲン生合成酵素チトクロムP450 C17α/C17-20リアーゼをコードする)のプロモーター領域の1塩基多型:子宮内膜症との有意な関連はなかった。 3.CYP19遺伝子(エストロゲン生合成酵素アロマターゼ)のイントロン4の3塩基(CTT)挿入/欠失遺伝子多型は、子宮内膜症群において欠失/欠失の遺伝子型が対照群に対して有意に多かった。 4.子宮内膜症群ではB7およびCw^*0702の頻度が対照群に比し有意に高頻度であった。このHLAクラスIの増加はNK細胞および細胞障害性T細胞機能と関連し、本疾患の発症進展に関連する。B7はNK活性を抑制することから、HLAクラスIが子宮内膜症の疾患感受性遺伝子の一つである。
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