エストロゲン依存症に発生したり、進行する腫瘍として、子宮内膜癌は乳癌と類似疾患とし捉えられてきた。しかしながらその本質はかなり異なり、子宮内膜はエストロゲンの影響を最も受けやすい臓器の一つである。そこで我々はエストロゲンによる子宮内膜の細胞増殖症や癌化に関連する作用機構を分子レベルで解明することを目的として、実験動物(マウス)の生体内に投与されたエストロゲンのシグナルを子宮や乳腺で選択的に阻害可能にすることを目的とする実験計画を立案した。平成13年度は、本研究テーマによる研究費の配分が追加承認で有った為に実験の着手に時間が掛かり、テストデーター取得を目的としてICR系雌性6週令のマウスを用いRNAを抽出する予備実験のみで終わった。平成14年度にはC57BL系雌性マウスを初年度同様に実験動物施設に導入し、1週間の順化後、ペントバルビタールナトリウム(50mg/kg)を腹腔内投与して全身麻酔下で左右の卵巣を摘出した。手術から1週間が経過した後に健康状態の回復を確認してから17β-estradiol(20μg/kg/day)をオリーブオイルに溶解した溶液を作成し、皮下注射した初日を0日とした後、経時的に子宮を摘出してRNAを抽出した。なお、コントロール群はオリーブオイルを皮下注射し同様にRNAを抽出した。抽出したRNAから新規エストロゲン誘導性遺伝子の単離し子宮内膜細胞増殖因子を突き止めるべく実験中であるが、本実験計画からすると古典的な手作業による遺伝子の単離よりもDNA chip法を用いて抽出したRNAから新規の遺伝子を単離する方法が効率よく、充分な結果が期待されている解析方法が望ましい。しかし、子宮内膜癌において癌遺伝子が発現している率が低く新規エストロゲン誘導体遺伝子の関与については解明することが困難であった。
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