研究概要 |
自己末梢血幹細胞移植:peripheral blood stem cell transplantation(以下PBSCT)を併用した化学療法を補う、T細胞による細胞治療プロトコールを確立するためのin vitroの解析を行う事を目的としている。 進行卵巣癌の手術予定者からあるいは手術時に得られた腹水のうち廃棄予定の一部約20mlを同意の下に利用し,同腹水から卵巣癌細胞を遠心法にて回収し,10%FCSを加えたハムF12またはRPMI1640培養液にて細胞を培養。増殖の認められた卵巣癌細胞様および比較のため既知の(cell bank由来の)培養卵巣癌細胞を準備。これらを超音波破砕して可溶性分画を精製し、これらを抗原として患者の腹水および血漿を用いて、ウエスタンブロット法により液性免疫反応の有無を8例において解析した。その結果、4例において自己の成分に対して反応性を示した。その分子量は約60kdであった。今後、この分画のアミノ酸断片解析を進める。 同抗原と患者末梢単核球を混合培養し、誘導されたT細胞の産生するサイトカインとリンホカイン(IFN-γ、IL-4、TNFα、パーフォリン)の細胞内メッセージを(一部RT-PCTで)解析したところ、CD4陽性T細胞の反応が優位であり、Th2タイプの反応は認められたが、Th1タイプの反応は抑制されていた。このことから、癌の細胞治療に関しては従来からのCTLによる治療法以外に、ヘルパーT細胞、特にTh1タイプのT細胞の反応の誘導が役に立つ可能性があると考えられた。
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