ヒト型モノクローナル抗体を用いた子宮体癌に対するミサイル療法の開発

2001 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 13671745
• 研究機関: 慶應義塾大学
• 研究代表者: 塚崎 克己 慶應義塾大学, 医学部, 助教授 (40118972)
• キーワード: ヒト型モノクローナル抗体 / TCマウス / 子宮体癌 / 免疫複合体 / ミサイル療法

研究概要

現在作製されているモノクローナル抗体(Mab)は、ほとんどがマウス型であるため、ヒト投与する場合にMAMA(human anti-mouse antibody)の産生が大きな隘路となっており、ヒトへの投与が可能なヒト型Mabの作製が望まれている。近年、遺伝子工学の進歩により、ヒト染色体そのものをマウス個体への遺伝子導入ベクターとして利用するアプローチで、完全なヒト抗体を発現するTC(trans-chrom osonic mice)マウスが作られるようになった。本研究では、このTCマウスを用いて子宮体癌に対するヒト型Mabを作製し、ミサイル療法への応用を試みることを目的とした。
1.ヒト型Mabの作製
子宮体癌由来培養株細胞SNG-SでTCマウスを免疫し、マウス血清中の抗体価が上昇した段階で、マウス脾細胞とマウスミエローマ細胞を従来のマウス型Mabの作製方法と同様の方法で融合させ、97個のハイブリドーマを得た。SNG-S細胞を固相化したCell EIA法、ならびに子宮体癌組織、正常子宮内膜組織を用いた免疫組織化学染色により、子宮体癌と特異的に反応する抗体(HSS-1)を作製するハイブリドーマを得た。
2.Mab(HSS-1)の性状の解析
(1)子宮体癌組織40例、正常子宮内膜組織40例を用いた免疫組織化学染色における陽性率は、体癌組織で57.5%(23例/40例)、正常組織で5%(2例/40例)であった。
(2)Mabの免疫グロブリンclassはIgMであり、抗ヒト抗体を用いた検索にてHSS-1はヒト型Mabであることを確認した。
(3)体癌組織を、過ヨウ素酸、トリプシン、ペプシダーゼなどにより処理した後のHSS-1との反応性の検討にて、過ヨウ素酸処理によりHSS-1と体癌組織との反応性が消失し、トリプシン、ペプシダーゼ処理により変化しなかったことより、HSS-1の認識抗原が糖鎖であることが判明した。
以上、平成13年の研究にて、将来体癌のミサイル療法に利用可能なヒト型モノクローナル抗体(HSS-1)の作製に成功した。

研究成果

• [文献書誌] Yoshibumi Kaneta, Katsumi Tukazaki, Kaneyuki Kubushiro, et.al.: "Selective cytotoxicity of adriamycin immunoconjugate of monoclonal antibody MSN-1 to endometrial adenocarcinoma in vitro and in vivo"Oncology Reports. 7. 1099-1106 (2000)
• [文献書誌] Kaneyuki Kubushiro, Yuichi Sakuma, Ktsumi Tsukazaki, et.al.: "Biological characteristics of human uterine endometrial cancer variant cells selected for blood group H type 1 antigen"Adhesion to vascular endothelial cells. Acta Histochem Cytochem.. 33(3). 209-213 (2000)
• [文献書誌] Takuya Irie, Kaneyuki Kubushiro, Katsumi Tsukazaki, et.al.: "Inhibision of attchment and chemotactic invasion of uterine endometrial cancer cells by a new vinca alkaloid,conophylline"Anticancer Res.. 19(4B). 3061-3066 (1999)
• [文献書誌] Koji Kobiki, Katsumi Tsukazaki, Shiro Nozawa, et.al.: "Detection of endometrial cancer by flow cytometry using two monoclonal antibodies"Cytometry. 36. 150-156 (1999)
• [文献書誌] Kaneyuki Kubushiro, Jun Ma, Katsumi Tsukazaki, et.al.: "Changes of β-1-4-Galactosyltransferase with the development of endometrial cancer"Gynecol.Obstet.Invest. 48(3). 211-14 (1999)
• [文献書誌] Yoshibumi kaneta, Katsumi Tsukazaki, Shiro Nozawa, et.al.: "Effect of Gelonin immunoconjugate with monoclonal antibody MSN-1 to endometrial adenocarcinoma on antigen-producing tumor cells in vitro"Jpn.J.Cancer Res.. 89. 583-588 (1998)