ラット卵巣、ブタ顆粒膜細胞を研究対象とし、顆粒膜細胞に対するFSHの刺激伝達機構を解析した。顆粒膜細胞は新鮮ブタ卵巣から小卵胞を採取し、卵胞液を得た。ここから顆粒膜細胞を調製、培養して研究に供した。 ラット卵巣においてPMSG投与により、c-fosとjun BのmRNAの発現は有意に上昇した。培養ブタ顆粒膜細胞はFSH添加30分後にc-fosとjun BのmRNAの発現は有意に上昇し、2時間以内に元のレベルに復元した。PMAを添加すると濃度依存性にc-fosとjun B mRNAの発現が増加した。FSHと共にstaurosporineを添加するとFSHによるこれらの遺伝子の発現は有意に抑制されたが、Rp-cAMPでは有意な抑制はみられなかった。さらに顆粒膜細胞内MAPK活性は、FSH(75IU/ml)により有意に増加し、投与10分後に最大に達し、以後は減少して60分後には対照レベルに戻った。PMAを添加すると有意なMAPK活性の上昇がみられたが、forskolinあるいは8-Br-cAMPを添加してもMAPK活性は有意な増加はみられなかった。そこで、FSHと共にstaurosporineを添加すると、FSHによるMAPK活性の上昇は有意に抑制された。 本研究の結果を総合すると、FSHは顆粒膜細胞において、主としてc-fosとjunB遺伝子のmRNAの発現を促進すること、そしてその細胞内刺激伝達経路としてはPKA系ではなく、PKC系を経ている可能性が示された。さらに顆粒膜細胞内mitogen-activated protein kinase活性も同様にFSHによって活性化され、その細胞内刺激伝達経路はPKA系ではなく、PKC系である可能性が考えられた。
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