背景:Ezrinはmembrane linking proteinとして細胞のintegrityに関与するとともに、増殖に関わる信号伝達系の一部を成すと考えられる。そこで卵巣癌において、Ezrinの果たす意義について検討した。 方法:卵巣癌におけるEzrinの意義について検討した。良性疾患にて切除した卵巣の健常部分(n=-25)、原発性卵巣癌(n=25)、卵巣癌転移巣(n=21)において、western blott法によりEzrinの発現を検討した。また卵巣癌細胞株SKOV3を用いてIL-1 alphaならびにEGFのEzrin発現に及ぼす影響を検討した。 成績:Ezrinは卵巣癌に発現していた。最も強い発現は転移巣に見られた。IL-1 alphaならびにEGFの添加で、Ezrinの発現が増強した。またこのIL-1 alphaならびにEGFによるEzrin誘導作用はtyrosine kinase inhibitorであるgenisteinで消失した。またIL-1 alphaならびにEGFによる浸潤性の変化も検討したが、その結果IL-1 alphaならびにEGFでは、浸潤能の上昇が観察された。 考察:今回の成績より、転移巣の卵巣癌細胞は、原発巣の細胞に比較して、浸潤能が高まっている可能性が示唆された。この変化のメカニズムの一つには、腹水中のIL-1 alphaならびにEGFによるEzrinの誘導があるものと推察された。我々はすでに、子宮体癌において、Ezrinの発現がMatrigel浸潤アッセイにて癌細胞の浸潤性を高めることを示したが、今回の検討より、このメカニズムは卵巣癌でも同様な意義を持つものと考えられた。
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