研究概要 |
本研究の目的は、tubulin脱重合阻害剤であるpaclitaxel(PTX)が薬剤耐性発現に関与していると考えられているheat shock protein27(HSP27)の発現を抑制することに着目し、この作用が婦人科癌細胞の薬剤耐性克服に貢献しているかどうかを検証するものである。 まず予備実験として、HeLa子宮癌細胞株のcisplatin(CDDP)感受性株(HS)とCDDP耐性株(HR)の二種類を用いCDDPとPTXに対する50%発育阻止濃度(IC50)(過去の実験成績を引用)もちいて、CDDP, PTXの単独接触、CDDP接触後PTXを接触させた場合(CTP)、PTX接触後CDDPを接触させた場合(PTC)に、殺細胞効果とHSP27発現効果にどのような関連があるかをみたところ、PTCの場合が他と比較してCDDP単独でみられたHSP27発現増強効果が抑制され、殺細胞効果も最も大きいことが伺われた。この結果をもとに、再現性を確かめる実験を繰り返し行ったところ、特にHR細胞においてCDDP, PTXに対する感受性に大きなばらつきが生じることがわかった。このため、培養条件、実験手技の見直し等を行い各細胞におけるdose-response curveを作成しIC50をもとめた。しかしこの濃度で実験を進めたところ、以前認められていたPTXによるHSP27発現抑制効果がみられなくなっていることに気づいた。この原因としては、細胞そのものの変化、HSP27測定条件の違い等が考えられる。この点を明らかにするために、薬剤接触後に細胞を回収する際、フラスコに付着している細胞と培養液中に浮遊している細胞との間でHSP27の発現が異なることが示唆された。そこで、浮遊細胞と付着細胞との割合により全体のHSP27発現強度がどのように異なるか、また、フローサイトメーターでHSP27を測定する際のゲートの設定によりchannel numberの平均と中央値に大きなずれが生じていることに着目し、HSP27の測定条件の設定の見直しを含め目下実験継続中である。
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