プライエル反射正常の無麻酔成熟モルモットを用い、ネンブタール麻酔下に胸鎖乳突筋を露出、SCM吻尾側2分の1の筋腹内に1本(関電極用)、胸骨付着部に1本(不関電極用)の微小金属電極(直径0.2mmのウレタンコーティング銀線)を埋め込んだ。電極は皮下を通し、頭部にデンタルセメントで固定した金属ソケットに接続した。防音室内に設置した動物固定装置でモルモットを固定後、頭部固定した金属ソケットに専用コネクタをはめ込み、入力アンプと接続。音刺激装置より発生させた強大音は専用チューブを介して直接モルモットの外耳道内に負荷させるようセットアップした。音刺激装置から作製される強大クリック音(持続時間;0.1ms、刺激強度:135dBSPL、刺激頻度:3Hz)をトリガーとして、走査時間26ms(刺激開始前4ms)でSCMの誘発筋電図を加算平均記録した。その結果、(1)同側SCMに埋め込んだ慢性電極から、立ち上がり潜時約5msの多相性の誘発筋電図反応が記録されること、ABRに比較して高閾値であること、(2)第VIII脳神経切断ではその反応が消失すること、(3)アミカシン筋注によりプライエル反射が消失モルモットでは振幅は減少するが、誘発筋電図反応が残ることが明らかとなった。つまり、強大音によりモルモットSCMで記録される筋電図反応は前庭性であり、ヒトVEMPに類似しており、動物モデルとして利用できる可能性が示唆された。但し、2本の前庭神経のうち一方のみ(上前庭神経または下前庭神経)の切断を試みたが、(1)モルモットでは内耳道が発達しておらず、ヒトのように内耳道内で前庭神経の分枝を確認することは不可能であること、(2)小脳橋角部では蝸牛神経と前庭神経の区別が困難なことが明らかとなり、内耳道内での前庭神経の部分障害作成がモルモットでは困難であることが分かった。
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