研究代表者等が以前から用いている定位脳手術下のナイフ・カット法で、生体ラットを用いてプロブスト交連障害モデル動物を作成した。まず、プロブスト交連を切断すると外側毛帯背側核(DNLL)内のニューロンのうちプロブスト交連繊維の起始ニューロンである、交差性投射ニューロンだけが著名な変性・消失にいたるが、DNLL内の同側投射ニューロンには全く変性が起こらないことを、逆行性トレーサー法等を用いて確認した。 軸索障害部位および起始神経核であるDNLLへの移植材料として、生後1日目の幼弱動物の脳組織移植を試みている。プロブスト交連の切断は定位脳手術下に、鋭利な微小ナイフを用いて行い、すぐに空気圧微量注入装置を用いて障害部位に幼弱動物脳組織の注入・移植を行った。(移植の最適時期は障害後数日経過してからの方が良いとの報告もあり、今後検討予定である。)現在、注入組織の生着を確認するために、蛍光色素で標識したラテックス・ビーズを予め移植脳組織に取り込ませたうえでの、移植を計画している。次に起始神経核であるDNLLの一側のみへの幼弱脳組織の移植を予定している。今後移植材料をより幼弱な胎仔動物の脳組織へと進める。 神経変性を抑える薬剤としては、起始ニューロンであるDNLL内ニューロンの興奮性細胞死を抑制するためにNMDA receptor antagonistを検討中である。薬剤の注入には浸透圧ポンプを用い、定位脳手術下に軸索障害部位の近傍に持続的注入を行う。
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