多機能分子である一酸化窒素(NO)は、ヒトの気道において重要な生理機能、並びに気道炎症の制御に深く関与している。またヒト鼻副鼻腔は生理的に重要なNO産生の場であり、現象論的にも副鼻腔においては高濃度のNOが検出されており、鼻アレルギーや副鼻腔炎などの疾患ではその濃度が変化することより、病態診断のパラメータとしての有用性が期待されている。 本年度の研究において我々は、NOS isoformの一つであり、かつ最もNO産生効率が高い誘導型NOS(iNOS)と、同酵素の発現制御に深く関わっている転写因子であるNF-κBに焦点を絞り、1)正常と病的状態におけるヒト鼻副鼻腔粘膜におけるiNOS発現細胞の同定と疾患による変動:鼻腔粘膜擦過細胞を用い、NOS isoformの発現を蛍光免疫染色、RT-PCR法にて解析した。同時に培養細胞よりのNO産生の状態を、NO蛍光測定試薬であるDAF-2DAを用いリアルタイム下に観察した。そして鼻アレルギーにおいて上皮細胞のiNOSの発現亢進がその重症度に応じて認められることを確認した。 2)副鼻腔鼻茸粘膜におけるNF-κBの発現と活性化を、そのサブユニットであるP50について、RT-PCR法および蛍光二重染色にて解析し、活性部位の局在を同定した。さらにNF-kB活性化率と粘膜組織でのサイトカインmRNA発現の関連性については、IL-8(r=0.468)、IL-16(r=0.47)、eotaxin(r=0.739)との間で有意な正の相関が認められ、組織における好酸球浸潤機構に果たす本転写因子の役割が判明した。引き続き粘膜上皮におけるNF-kBの活性化とNO産生の関係、また活性化の誘因など、について検討を進めている。
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