1.舌扁平上皮癌におけるラミニン発現 手術にて切除した患者舌扁平上皮癌組織におけるラミニンγ2鎖の発現を免疫組織化学的に検討した。その結果、癌細胞どうしが密に接着しながら増殖している場合(胞巣状増殖)、ラミニンγ2鎖が胞巣の辺縁細胞に発現していた(辺縁性発現)。一方、癌細胞がばらばらに分散し、舌筋層や結合組織内に深く浸潤している場合(分散性浸潤)、癌細胞一つ一つが強くラミニンγ2鎖を発現していた(びまん性発現)。また、分散性浸潤を呈しラミニンγ2鎖をびまん性に発現した癌細胞は高率に神経周囲浸潤や脈管浸潤をきたしていた。予後に関しても、ラミニンγ2鎖びまん性発現群は辺縁性発現群より予後不良であることが分かった。すなわち、舌扁平上皮癌において、細胞同士が密着した胞巣状増殖は正常扁平上皮の形質をある程度保持した状態であり、ラミニン発現は正常上皮の基底層に相当する辺縁細胞にのみみられているのではないかと考えられる。一方、分散性浸潤をきたしびまん性にラミニンを発現した細胞はより悪性度が高い状態とと思われ、今後はそのメカニズムの解析が必要である。 2.腺様嚢胞癌におけるラミニン、コラーゲンの発現 手術切除した患者腺様嚢胞癌組織におけるラミニン、コラーゲンの発現を検討した。扁平上皮癌と異なり、癌細胞には発現を確認できず、大きな癌胞巣の周囲に発現を認めた。比較的分化度を維持した発現と考えられる。しかし、癌胞巣が結合組織や神経周囲に浸潤する場合、癌胞巣は小さくなり細く伸長しており、その周囲にラミニン、コラーゲンの発現がみられた。すなわち、腺様嚢胞癌は分化度を維持しているため増殖が緩除であるが、細胞外マトリックスを利用しながら神経周囲や間質に深く浸潤しており、これが腺様嚢胞癌を特徴づけているのではないかと考えられた。
|